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過去の講演会
第151回 川崎医学会講演会
::日 時 | 平成20年5月28日(水) 16:00・17:00 |
::場 所 | 図書館小講堂 |
「英国生活で見えてきた生活習慣病の源泉
-maternal origin of adult onset diseases-」
内科学(腎) 教授 柏原 直樹
糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームは「生活習慣」の乱れに起因するとみなされている。とりわけ日本人は軽度の肥満によってもこれらの疾患に罹患しやすく、人種差あるいは遺伝的背景が存在すると理解されている。
しかしながら英国は本邦以上の「高度肥満社会」であるにも関わらず生活習慣病の有病率は本邦ほど高くはない。生活習慣病の源泉には母胎内で準備されている外部環境への適応機転の破綻があることが判明してきた。Oxford大学の研究者達との交流を通して見えてきた現代人の疾患構成の背景について論考してみたい。
「オックスフォード大学グリーンカレッジ滞在報告
Anaesthetist と Anesthesiologistについて」
麻酔・集中治療医学 教授 藤田 喜久
麻酔 Anesthesia という言葉は造語で、A :ない、esthesia :知覚、“知覚がない”を意味している。
Anesthesiology は、Anesthesia を対象とした学問:-ology という意味であり、麻酔科学と訳される。
しかしイギリスでは、麻酔科学も麻酔も Anaesthesia であり Anesthsiology とはいわないしAnesthesiologistという言葉もない。世界で初めての公開麻酔は、1846年モートンによってアメリカで行われた。しかしモートンは麻酔で特許をとり大儲けをしようとして世間の不評を買い、周囲から尊敬を集める人間ではなかったようである。その後、アメリカでは一定のトレーニングをうけた看護師に麻酔を行う資格を与えて、麻酔士Nurse Anesthtist とよび並列する形で麻酔科は発展し今日に至っている。一方、イギリスの最初の麻酔科医Anaesthetist は John Snow (1813-1853)である。John Snow は、コレラが空気でなく水を介して伝播することを証明した疫学者であり、麻酔の科学的根拠をつくり、ビクトリア女王に麻酔を行った。麻酔科学はそれ以来、臨床医学の独立した分野であることがイギリスで認知され、終始一貫して医師であるAnaesthetist によって行われてきた。 John Snow にその系譜をたどるイギリス麻酔科医はAnaesthetist であり、わざわざ Anesthesiologist と言わないのである。