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第187回 川崎医学会講演会
:: 日 時 | 平成22年8月18日(水) 16:00・17:00 |
:: 場 所 | 図書館小講堂 |
:: 座 長 | 石原 克彦 |
「免疫系エフェクター細胞の産生制御に関わる血液幹細胞・前駆細胞の多様性」
Paul W Kincade博士
オクラホマ医学研究財団
免疫生物学と癌研究プログラム、プログラム長
2002-2003 アメリカ免疫学会(AAI)会長
2004-2005 アメリカ実験生物学会連盟会長
2006- ISI List of Highly Cited Scientists
セルソーターにより造血組織である骨髄細胞を小さな細胞集団に分画することが可能となり、次々と新たなリンパ球前駆細胞が同定され、血液幹細胞の多様性が明らかとなった。血液幹細胞の分化過程において多能性は徐々に失われ、様々な段階で運命が決定される。成熟血液細胞を供給する能力の異なる大小様々な前駆細胞集団が存在し、一つの細胞系譜が複数の経路から発生し得るということは、感染症において産生する細胞の型と数を劇的に変化させるという適応性を造血系に与えている。
最近、病原体の産物によるToll様受容体の刺激により造血能が変化することを明らかにした。急性の曝露は血液幹細胞を活性化し、末梢へ動員する細胞を増加させるのみならず、前駆細胞の分化の方向性をも変化させる。少量の慢性曝露は、血液幹細胞の自己複製能喪失と骨髄系造血優勢といった永続的変化の原因となる。リンパ球造血能の喪失、特定幹細胞亜集団の増大・縮小といった変化には加齢性変化と共通点があり、軽度な持続的感染によって免疫系の老化が進行すると考えられる。